航路上の風の方向


第9回Vendee Globeは2020年11月8日にビスケー湾に面したレ・サーブル・ド・オロヌをスタートしますが、フォイル艇の艇速に大きな影響を与える航路上の風向はどうなっているのでしょうか?

フォイル艇は風向きが80度から120度でもっとも性能を出します。クローズドホールドでは45度から50度の幅でしか効果がありません。さらに140度以上の追っ手では性能を出しません。

Vendee Globeの参加艇はレー・サーブル・ド・オロヌを出てビスケー湾を南下して、西から東に喜望峰、リーウイン岬、ホーン岬を経由して世界を回ります。大西洋を長距離下り、最初にインド洋から南氷洋を横切る危険な航海と、世界で最も大きな太平洋を横切ります。そして、最終的に大西洋をレ・サ-ブル・ドオロヌを目指して戻ってきます。それは海のエヴェレストのスタートとフィニッシュの地点です。

 

ビスケイ湾の罠。

 

フィニステレ岬とレ・サーブル・ドオロヌの間の南西に吹く嵐に注意しなければなりません。どの外洋レーサーもビスケイ湾は難しいところだという評価を下しています。大陸棚の浅瀬とカンタベリー山脈から吹き降ろす強い風の間で大西洋に出る航路を外れることはセーラー達にとって極めてきついことになります。一方で、北風のケースではそれはスペインの西の端を目指してすばやく下れることを意味します。そうして、マディーラ島とカナリヤ諸島を通過します。やがて、できるだけ早く貿易風をつかまえて、無風地帯に入る進路になるカーボベルデ諸島をさける進路をとります。

 

無風地帯からセントヘレナ島へ、操船戦略。

 

北半球と南半球の境で無風地帯としてよく知られている熱帯収束帯はヨットマン達にとって悪夢です。不安定な風、激しい雷雨、時折来る豪雨、無風地帯を脱出するのは宝くじに当たるようなほとんどまれなものになります。一旦、赤道を通過すれば、東へ転舵しインド洋に向かって追い風をつかまえる前に、南緯25度、西経15度のセントヘレナハイ(ほぼ常駐の高気圧、セーリングに影響を及ぼすの周辺の航路を見つけなければならないという問題に遭遇します。セントヘレナ島はギニア湾の真ん中にあります。しかしその名前を生んだハイ(高気圧)はブラジルとアルゼンチンの沿岸に正確に渡るための微風を生み出すこともします。

 

インド洋、未知の地帯

 

これは、バンデグローブ最初の入賞者、Titouan Lamazou が喜望峰とオーストラリアの南東へ向かうタスマニアとの間での大変な荒々しさにこのニックネームを付けました。インド洋を渡りながらヨットマン達は別の言葉も思い出します。薄明かり、危険な海、荒れ狂う風、寒さ、湿気の多い気候、わずか数日でバンデグローブのセーラー達は彼ら自身が完全に孤独だということを感じます。船首の先には彼らが最も南寄りのルート、それは同時に氷海をさける最も南の限界で妥協しなければならない数千マイルがあります。航路変更は気持ちを動揺させ、そして彼らの気持ちの上に重くのしかかります。艇に重すぎる負担をかけずに素早くどのように帆走するのかわかっていても、もう一度正しい選択肢を取っているだろうかと自問します。そして、みんなどのようにして生き残るのかを理解しています。

 

太平洋、帰り道に向かう。

 

ホーン岬に到達するためには平均しておよそ20日間かかります。大気が徐々に変わります。セーラー達はうねりがより規則正しく、より長くなり、そして海はより澄んでくると言います。一旦、彼らが日付変更線を通過すると、復路の旅が始まります。しかしながら、ホーン岬を回る航海は同じく待ち構えている危険との共存です。まず最初は氷山の存在です。かなり北の緯度でも近づいてきます。これはレーダー上に大きな氷山を見つけることのできるヨットマンにとってさえも緊張する見張りをすることを意味しています。流氷や小さな氷山の位置を特定することはできません。それらは時として海面に1メートルよりも小さく浮いています。しかし、それらは重さが30トンから50トンあります。常に衝突の危険があります。そしてデッキで危険を察知しようと時間を費やすことはたまった疲れを増幅させます。ホーン岬を回ることは帰り道になったことを意味します。

 

南大西洋、気のなえてしまいそうな上り。

 

数多くのボートが南大西洋でリタイア―することを忘れてはなりません。用心して船にガタが来始める数週間を何とか維持してすり抜けます。しかしそれ以上に、南大西洋は彼らにリタイアしなければならないと思わせる意地悪なショックを与えます。パンパロス、アルゼンチンの沿岸に吹き付ける強風は予期できない嵐です。強風は帆走をいつも困難にします。そして、普通向い風での帆走はボートと人を衰弱させます。やがて、もし彼らが統計よりも西寄りに寄っていたら無風地帯につかまります!

 

北大西洋、早い区間。

 

徐々に、バンデグローブのシングルハンドのヨットマン達は寒さの中に戻っていきます。防寒具を付け、彼らはフィニッシュに向けカウントを開始します。彼らはどのようにしてレ・サブール・ドオロヌへ戻るのか決断しなければなりません。常に彼らはフランスの西海岸の港に向けて直接帆走するための西方向からの風をつかまえなくてはなりません。彼らは貨物船や、大陸棚の端で操業するトロール漁船と遭遇することで、すこしづつ文化の香りを感じはじめます。

このような航路を取るVendee Globe 2020のセーラー達は、下記の図のような風向きの中で航海します。

青は追い風、赤は向かい風、紫は横風

以外に横風の域が少ないことに気づきます。

フォイル艇は2016フォイル艇に比べて20%の速力増が見込めていますが、全行程で20%アップではありません。2016年、1位のフォイル艇は74日+でフィニッシュしています。それは今回1月20日に当たります。新フォイル効果が出てそれより早いと思われますが、いつフィニッシュするかは今はわかりません。

 

Watson Courtier